音楽演奏利用者団体|日本の音楽これで委員会

JASRACによるBGM利用事業者・店舗に対する音楽著作権の手続き催告調停の問題点について


一般社団法人日本音楽著作権協会(以下JASRAC)が、BGM利用事業者や店舗に対して音楽著作権の手続き催告の手法として、全国の簡易裁判所に民事調停の申し立てをおこないました。

BGMを利用する全国258施設(171事業者)を一斉に法的措置

朝日新聞2015年6月10日水曜日朝刊社会面ニュースQ3では、このJASRACの行為に対して、著作権問題に詳しい福井健策弁護士の見解を掲載しています。

当協会では、独自に日本の音楽著作権のあり方について検討していますが、その中で日本の音楽著作権に詳しい弁護士を探すと、JASRACから寄付されたお金で研究に取り組んでいる福井健策弁護士のような立場の人しか見当たりませんでした。

JASRAC寄附講座コンテンツ産業論 第7回 講義概要 講師紹介 福井 健策氏(骨董通り法律事務所、弁護士・ニューヨーク州弁護士)

朝日新聞にも掲載されたように、福井健策弁護士のような立場の人が「JASRACの今回の法的措置は妥当だと強調する」のは当たり前だと感じています。また、彼のようなJASRACと利害関係にある人からの発言は弁護士であれ音楽出版社であれ、総じて利用料の支払いや徴収についての妥当性を強調する根拠として、JASRACに著作権管理を委託している著作者の権利や対価の請求権を持ち出します

20150610JBM

しかし、実際はどうでしょうか? BGM利用店舗やライブハウス等で利用された楽曲が「いつどの店舗でどれだけ利用された」かという真実の調査をJASRACはおこなっておりませんし、それに代わる調査方法の詳細や、徴収した利用料の分配先を一切公開していません

JASRACがいう音楽著作権の手続きという名の包括的支払い契約の問題点

BGM利用店舗やライブハウスに対して、JASRACが実際に音楽著作権の支払い手続きを催告する際、「これを使いましたので利用料を支払います」という一曲ごとの契約もできる事になっていますが、実際にはBGM利用店舗やライブハウスには包括的利用料支払い契約以外の選択の余地がありません

JASRACは利用された楽曲の調査をきちんとせず、サンプリング調査という名の調査実績も公開せず、分配先も一切公開しない徴収方法を実際におこなっています

この包括的音楽利用料の徴収方法の問題点は、著作権者の名を騙って徴収した利用料を、実際に利用した著作者に分配することを一切担保していないことから、JASRACによる詐欺行為であると多くの日本国民に理解されています

例えばファンキー末吉という爆風スランプのランナーという曲の作曲者は、2013年10月31日にJASRACから下記の訴訟をおこされています。

ライブハウスの経営者に対し著作権侵害行為の差止めと損害賠償を請求

ファンキー末吉は裁判に至る前、JASRACから音楽著作権の手続き催告の調停をおこされておりましたが、上記の問題点に自ら気が付きました。(彼は、JASRACに対して彼の作品である音楽の著作権管理を全て委託する信託契約をしているJASRACの正会員という立場です。)

なぜなら、日本全国のライブハウスで数千件では数え切れないほどのライブ生演奏をしてきて、今までJASRACが年に4回三ヶ月ごとに分配している著作使用料支払い明細の中に、一度たりともライブハウスでの演奏名目で支払いがされていないからです。このことを調停で持ち出し問題にしたところ、JASRACから一方的に調停不成立にされ、上述の通り裁判をおこされたのです。

ファンキー末吉の裁判費用寄付を募っている支援者の会

つまり、JASRACはもちろん、著作権に詳しい弁護士も、文化庁も文部科学省も、裁判官ですらこの正しい分配がされていないことについて言及する事無く、著作者の権利を盾に利用料を一方的に徴収し、JASRAC独自の隠された方法で分配することを黙認しているのです。

これを搾取と呼ばず何と言えばよいのでしょうか?

日本の音楽これで委員会は、今後も日本の音楽著作権の正しいあり方を追求して行きます。

運営管理: 河崎 覚